どろえびすの診療日記

| コメント(0)

 認知症の冷蔵庫

 

 今頃認知症の人は多いが、訴えや、症状もさまざまなら問題行動もさまざま。長い間患者さんを診ていると、特徴的ないろいろなことに気づく。

 発症の初期には、「自分は呆けてきてるんじゃあないか」と思い悩んだり混乱したりする時期がある。

 今日おいでになったSさんは82歳、若い頃は戦後で働きにはたらいて、女手一つで一人息子を育てた。その息子は医学部を出て今はバリバリの神経内科医。息子の同居のすすめにも同意しないで、認知症状が顕在化してきた今も気丈に独居を続けている。最近は診察に訪れるたびに息子には言えない不安な気持ちを少しだけ話すようになった。

「センセ、最近何かおかしいですわ」

と言う。わたしが

"何がおかしいの?"

 と言うと

「今日が何曜日かわからなくなったしですね、要らないものを買ってくるし、この前ね、砂糖を買ってたのにまた買ってしまうんです。昨日もね、先生の診察をすませてから買いものに行くつもりだったのに、先きに買い物行ってですね、まあ、美味しそうな柿ねえと思って柿を買ったんですね、そしたら診察に来るのを忘れてしまいました」

"ま、それくらいはあるでしょう、年をとるとね"

「まだ呆けてはいないと思うんですけどね・・・、呆けにだけはなりたくないですからねえ、先生、どうでしょう」

 診察に来られるたびに同じことばかり言われるし、クスリの管理もできなくなっているから、もうとっくに認知症になっていることは明かなのだが・・・、わたしは

"まだまだ・・・"

 と言ってその後尾を濁した。

 「認知症の方の冷蔵庫は食べもので満員、うつ病は空っぽ」と言うが、Sさんを訪ねたときに「ちょっと冷蔵庫みせて・・・」と言って、彼女が

「まあ恥ずかしい」と躊躇している間に冷蔵庫を開けてみると中は新旧とり混ぜた食べもので満員、それに異様な臭気も・・。   ('09.10.23.)

コメントする

最近のブログ記事

ご無沙汰していました
どろえびすの診療日記
どろえびすの世相横断、政情縦断 6 &n…
どろえびすの診療話
東北大震災に被災されたみなさんに心よりお…
どろえびすの診療話( )「寒さで人が死ぬっていうこと」
87歳のAさんの家に往診に行った。 Aじ…
どろえびすの診療話.2011.1.17.
ま、今時の女性の81歳と言えば死ぬにして…