どろえびすの診療話.2011.1.17.

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ま、今時の女性の81歳と言えば死ぬにしては早すぎる。

 でも、今年の冬は病気を抱えた独居老人には厳しすぎる。この方も

危ないなあ、と思ってた。

 この方は岡山県北の生まれで、戦争中と戦後の何年間かは呉で旅館

の仲居さんのような仕事をしていた。

「わちらが働いていた旅館に海軍さんがよう来てなあ、あの人らは若

くても士官なんじゃろうなあ、上座に座ってなあ、カッコえかったで

え」などともう60年もそれ以上も前のことを懐かしんでいた。

 この女(ひと)の主病は気管支喘息、それに年々ひどくなる認知症。

「盗られ妄想」が時々出現して「鍋が盗られた」と平気な顔して言う。

アルツハイマー型認知症に間違いない。滅多に出歩かないのに、ある

日近くの小学校の体育館にいて警察に保護されたときもある。

 こんな風だから独居も限界かなあ、とケアマネージャーがご本人を

連れて新しくできた老人施設を見学に行った。施設に入った途端に

「うっちゃあ、こんなところには入らんで・・・、誰か他のもんを入

れてあげんさい」 

 と断じるものだからケアマネージャーもとりつくしまがなくそのま

ま数ヶ月が経過した。

 昨年末、腰痛で病院に入院して12月30日に退院した。

 正月を家で過ごしたわけだが、今年は例年になく寒い。暖は十分

とれていたのかどうか。

 年が明けて1月6日に一度受診されたが、その日は患者さんが多く

て、この方に多くの時間を割いて話をすることができなかった。

 1月8日夕刻家は全焼し、女の人の遺体が焼け跡からみつかった。

 焼け跡に一度お詣りをした。もう何本かの新しい花が供えられてい

た。この方の介護に携わった人の何人かが供えたらしい。わたしは家

を出るとき、わが家で一番よく育った太いダイコンを供えて「あの世

でブリ大根でもして食べてちょうだい」と心で言った。彼女は丈夫な

歯をみせて「うしっしい、センセありがとう」言っているように思え

た。

 

(2011.1.27.)

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